僕と妹




「好きだ知美、僕と……兄ちゃんと付き合ってくれ!!」

 僕の迫真の告白を聞くと、知美は軽蔑の眼差しで僕を見据えた後にこうのたまった。

「妹に告白するなんて兄ちゃんキ・モ・す・ぎ!!二度とそんなこと言わないでよね、耳が腐るから。」

「僕の何が気に入らないんだ??知美の嫌いなとこは直すようにするから、考えを改めてくれないか??」

 必死に食い下がる僕に対して知美は侮蔑を通り越して呆れたような境地に至ったようだ。腰に手を当て、ふぅとため息を一つつくと人差し指をビシ ッと立てて僕に説教を始めた。

「いい?何が気に入らないって兄ちゃんの全部が気に入らないの!!ルックスもサル以下、経済力のない貧乏学生、スポーツも勉強も何もできないくせにオタク趣味。終いには妹に告白するなんて何考えてんの?兄ちゃん学校で皆になんていわれてるか知ってる??オタゴリラよ、オタゴリラ!!そんなのと同じ血を引いてるのですら嫌なのにそもそも付き合えとか全然意味わかんない!!それに知ってるでしょ??私はちゃんとした人とお付き合いをしてるの。二度と変なこといわないでよね!!」

「お付き合いって2組の山田とかいうやつか?やめとけあんなヤリチン。犯され抜いて捨てられるのがオチだぞ。」

「兄ちゃんが山田君の何を知ってるって言うのよ??彼はそんな人じゃない、二度とそんなこと言わないで!!」

 二度と二度とと注文の多い妹だ…。どうせもう食われてるのなんか誰の目にも明らかなのに……。そもそも普通の感覚で見たら、どの女子だって 山田がまともなやつじゃないってことくらい分かってるのに。恋は盲目ってやつですかね。

「これ以上は言わない。これで最後だ。知美、お前を幸せにしてやれるのは僕だけだ。山田なんかになびくんじゃない!!」

「うざい」

「本当に不幸になるぞ??あの男の目当てはお前の体だ。何でそれが分からない??」

「だから違うってーの」

「何が違うものか!!親からもらった大切な小遣いで陰部だけパックリと穴が開いた黒いショーツなんか買いやがって!!脱がずに結合しようという魂胆が丸見えじゃないか!!お前は毒されているんだよ!!」

「ちょっと、なんで兄ちゃんがそれ知ってるのよ??」

「お前のことで知らないことなんかあるものか。兄ちゃんはな、好きな人のことは全て知りたいと思っている。これくらいは朝飯前だ。更に言うとだ!!お前が体育館倉庫でファ○クしてた時に、あの男は外に出してと要求するお前の事を無視して中出ししたはずだ。」

「ひぃ〜〜、もうやめてよ〜〜〜」

「兄ちゃんならそんなことはしないぞ。知美が嫌がったら外に出す。そもそもゴム無しでセックスなんかしない。責任取れるほど大人じゃないからな。あんな無責任男とはちがうんだ!!なぁ、これで分かっただろう?どっちが知美のことを愛しているのかがね!!」

「ううぅぅ、もう止めて……。言うこと聞くからホントにもう……お願い……」

 ようやく黙らせることができた。大丈夫、バカな妹でも最愛の女性であることに変わりはないさ。いつまでも兄ちゃんが知美のこと面倒みるからな 。僕は満たされた気持ちでいっぱいになり、胸の前に手を十字に切ったあと、全身全霊をかけてこう叫んだ。

「知美、ぼくは君を愛している。キミのためなら何でもできる。ウンコだって食える。もう二人を引き離すものはなにもない。やっていけるはずさ、僕とお前なら!!」

 変態兄と美人妹のやりとりを見ていたギャラリーは、突然の変態の告白に騒然となった。「あの兄あってあの妹ありか……」とか、「ひどいよ知美  ちゃん、信じてたのに」とかなにやら僕らを哀れむ声が聞こえるが、まぁ気にしないでおこう。この奇跡のカップル誕生のシーンに立ち会うことがで きたのだ、むしろ感謝して欲しいくらいだ。

「愛してる、知美。さぁ僕らの家に帰ろう!!」

 僕は知美の手を引っ張り家路を急いだ。晴れ晴れとした僕の気持ちなど露知らず、

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

まるで誤解を解きたいかのような知美の絶叫が学園中に広まるのだった。





続く


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