僕と妹



第2話


「・・・・・・・・・・・」

 せっかく僕らは2人で下校しているのに、さっきから知美はうつむきながら黙ったままだ。きっと兄弟ではなく恋人として帰ることに照れているんだろう。知美が高校に入学してから今まで一度も一緒に登下校をしたことはなかったことも拍車をかけているのかもしれない。何にしろ可愛いやつだ。家に着いたらぎゅっと抱きしめてやらないとな、なーんちゃってウへへへ……。

「おい、お前ら。ちょっと待てや!!」

 よこしまな妄想で一人トリップしていた僕は急に誰かに呼び止められた。誰だよせっかくいいところだったのに……。

 振り向いて僕はハッとした。同時にちょっと恐怖を覚えた。その震えが知美に伝わったのだろう。知美はうつむいていた顔を上げ、死んだ目に生気を蘇らせて一言

「山田君!!」

 急に僕の手を振り切って山田の方に駆け寄り、あろうことか彼に抱きついた。

「触るな変態女が。」

 山田が知美に一閃を加えた。それを見て僕は更に縮こまる。
 なんで山田が…。粗暴な行動、あの女を性欲処理としか見ていないようないやらしい目つき、いつも不良たちとつるんでいるクズがなんで…。

僕の狼狽を見て取ったんだろう、ただでさえ威圧的な山田は更に見下すように僕に言い放った。

「おい、オタゴリラ。オメーはこいつの兄貴の癖にこいつに告ったんだってなぁ。俺も聞いてびっくりしたぜ。なんだっけか、僕はお前を一番愛してるだっけかなぁ。兄妹の癖に笑わせるぜ!!知美、お前も告られてそれに付いて行ったんだってな。幻滅したぜ。兄妹そろってそんなんじゃお前ら終わってるぜ、ぎゃははははっ」

 下衆な笑いをしながらも、山田は知美にあまり嫌悪感を持っていないようだ。

「まぁいい、知美。今からお前抱いてやっから、さっさとホテル行くぞ。そのバカ兄貴のことなんか忘れるほどヒィヒィ言わせてやるぜ!!」

 ビクン。

 その一言に僕は体中の血液が沸騰するのを感じた。これが切れるってことなのか?
 山田の後に付いていこうとする知美も知美だ。僕を裏切ろうって言うのか?こんなに僕が想っているのに、そんな下衆な男の方がいいのか?犯してやるといわれてホイホイついていくなんて。

ここは兄らしくきついお仕置きが必要だな。

そう思った時、僕の中に恐怖など微塵もなかった。ただあの二人を引き裂くだけ。そして知美を本当に僕のものにするんだ!!

「二人とも、少し待ちたまえ!!」

「」あぁん!?」

 二人揃って僕のことを小ばかにしたような目で睨む。チクショウ、負けてたまるかあああぁぁぁ。

「キミ達が付き合っていることは、まぁ、僕たちの学校では多くが知ることでもある。それに相違はないかい?」

「あぁ、そうだ。それがテメェに何の関係がある。」

「それがどうした?おおありさ、大問題なんだよ!!君は上っ面では恋愛だとは言い張るものの、そんなものは嘘っぱちだ。ただうまそうな体した女を食うための、言わばセフレ的関係。いや、そんなもんじゃない。ただの性欲処理の肉便器だと思っている。違うかい?」

「ちげぇよカス!!俺は本気でこの女に惚れてんだ!!」

 僕は見逃さなかった。山田の目蓋がピクッと反応したのを。やはりこいつは嘘をついている!!これなら僕にも勝機はある!!!!

「何が違うものか!!じゃあ
N高校英語科のまゆこちゃんと手をつなぎながらラブホテルに行ったのはどう言い訳するんだい?U商業の輝美ちゃんにデパートの男子トイレ個室でフェラ○オをさせていたのはどう?そうそう、S中学2年生の奈々子ちゃんにランドセルを背負わせながら放尿させて、その恥ずかしがる様を見ながらオ○ニーしていたのなんかもう人としてアウトだよね。あとA実業の……」

「なななななななにをこここ根拠にそそそそそんなことをををををを……」

「くくくっ、声が上ずっているよ?まぁ、知美のまえで虚勢を張りたいのは分かるけどね。証拠ならここにあるよ。ほら。」

 そこには今僕が言ったことの現場を捕らえた写真のほか、別の高校や中学、OLらしき格好をした女性とまで結合したり乱暴したりと、山田の行ったあらゆる性行為を激写したものがあった。それをビシッと彼の前に突きつける。

「なんでそんなもの持ってんだよ!?盗撮かこの野郎!!」

 もう山田は否定はしなかった。ようやく自分がただの好色の変態だと認めたみたいだ。

「あはは、確かに盗撮だけど僕がやったんじゃないよ。オタクはパソコンがなければその行動は著しく制限される。何故ならインターネットができないからね。で、当然僕もパソコンで色々やっているんだけど、その中の僕が運営している裏情報ホームページで知り合ったアングラ関係の仲間の中に盗撮趣味のやつがいるんだけど、そいつがカメラを仕掛けている場所の多くで君が性行為に興じているところが多分にあってさ、今日の日のような時のためにそれをゆずってもらったということさ。ははははっ、偶然と人との繋がりって怖いよねぇ。」

「……ちくしょう……。こんなオタゴリラにしてやられるなんて……」

 山田は悔しがって歯をギリギリと噛み締めていた。僕はもうおかしくておかしくて……。笑いが止まらなかった。

あはははははっ。

 高らかに笑う僕の横で、知美はキッと山田を睨むと平手一閃をくれてやっていた。

「信じてたのに……。信じてたのにいいぃぃぃいぃ!!もうあんたの顔なんか見たくない!!さっさと消えてよ変態!!」

 山田は呆然としていたがすぐに冷めた表情に戻すと、

「もったいねぇがしょうがねぇな。別の女でも誘うか、ははっ」

 と笑いながら去っていった。まるで反省の色がない。さっきまでおかしくてたまらなかった僕だが、流石にこの態度にはイライラした。それよりも知美だ。知美はいったいどうなった??

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 横を見ると、あまりの事実に放心状態の知美。無理もない、好きな男がただの好色男で自分もただ体を目当てにされていただけだったんだから…。

「元気だしなよ、知美。僕がついてるよ。兄ちゃんが一生君の傍で支えてあげるから。」

そっと知美の後ろに回りこみ、両手で抱えるようにして抱きしめた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

それでも知美は何も言わずにうつむいていた。頬には涙が流れていた。僕は、妹を哀れに思う気分と、僕の言うことを聞かなかったからという責めるような気分が入り混じっていた。 その複雑な気分を払拭するため、僕は
知美の自慢のFカップの下チチをさりげなく触ってその重みを愉しみながら、一人変態的な笑みを浮かべるのだった。



続く

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